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今すぐ使える! 付言事項の例文紹介

今すぐ使える! 付言事項の例文紹介

こんにちは。司法書士の田中です。

今回は前回の記事の補足として、遺言の「付言事項」について専門家の立場から述べさせていただきます。

例文を見て遺言を書く際の参考にしたい方は目次をご活用くださいませ。

 

 

1.“付言事項”とは?

付言事項とは、遺言者が遺言を書いた動機などを記載する項目の事を指します。

付言事項そのものに法的効力はございませんが、遺言者の気持ちを相続人に伝える事ができるので、相続人等の紛争を回避し、

遺言の円滑な実現を図るうえで意義があり有益と言われています。

一般的な付言事項は?

一般的な付言として下記3つの内容が定番です。

①遺言を作成した動機

②遺産分配の理由

③遺言者の配偶者や障害を抱える子らの面倒を見るなど、家族や親戚等へのメッセージ

今回はその中でもさらに具体的な付言事項についてご紹介致します。

2.葬儀方法を指定したい時

葬儀の方法について希望がある方は、付言事項として記載しましょう。

例えばよくある記載事項ですと、以下があります。

①葬儀や法要のやり方を指定する際

②特定の宗教による葬儀を希望する際

③葬儀を希望しない場合

④散骨を希望する場合

これらに該当する方は、遺言に記載してみてくださいね。

例文
(付言事項)

私の葬儀について、家族だけで済ませてください。私は家族で過ごす時間が何より幸せでした。

そんな家族に最後の瞬間も見送ってもらえたらと思っています。また、遺骨は○○県○○市○○区○○の△△寺院への納骨を希望します。どうかこれからも、みんな仲良く元気に過ごしてくださいね。

3.永代供養を依頼したい時

付言事項で特定の寺院等に永代供養を受けられるように依頼することも可能です。

ただし、あくまでも付言事項としての記載のため実現の確約はできません。

もしどうしても永代供養を依頼したいのであれば、寺院との間に負担付き死因贈与契約を結んでおくと良いでしょう。

負担付き死因贈与契約については、こちらの記事でご紹介しておりますので
もしよければご確認くださいませ。

例文
第〇条 遺言者は、遺言者の有する預金の中から金2,000万円を、△△寺(○○県○○市○○区○○1番1号)住職□□(昭和40年1月1日生)に遺贈する。

第〇条 前条の遺贈は、永代供養のためのものとする。

(付言事項)

私には身寄りがおりません。そのため、私の遺産を○○寺の住職へ遺贈する代わりに△△家の永代供養をお願いします。

どうか皆様お元気で。

4.ペットの世話を依頼したい時

遺言者の死後、どのようにペットの世話をしてほしいかを第三者に依頼する場合について、法的効力のある事項と併せて付言事項を記載すると良いでしょう。
自分の死後ペットのお世話を第三者に任せるわけですから、任された側から「世話を押し付けられた」というような捉え方をされてしまわないよう慎重に書くことも大切かもしれないですね。

ご自身の死後、ペットの生活について確実に守りたいという方はこちらの記事を参考にしてみてください。

例文
(付言事項)

遺言者は、遺言者の愛犬ポチ(柴犬・オス)をリーガル太郎に遺贈します。リーガル太郎は愛犬ポチを私に代わって世話を行ってください。愛犬ポチが亡くなったら手厚く埋葬し、供養をお願いします。愛犬ポチは私の大切な家族です。ポチがこれからも幸せに暮らせることを願っています。

5.死後のSNSの取扱いを指定したい時

続いて、昨今利用者が増えているSNSに関する付言事項についてご紹介します。

遺言者がSNSを利用していた場合、そのアカウントの削除や運用方法について諸手続きを依頼する内容の付言事項を残すケースが増えています。

もちろん“追悼アカウント”として遺言者の死後もSNSを閲覧できる状態として残すこともできますし、死後にアカウントを削除してもらいたい場合はその旨を記載すると良いでしょう。
その際、SNSアカウントにはIDやパスワードがあると思いますので、併せて記載しておくと遺言執行者がスムーズに処理を行えるでしょう。

ただし死後のアカウントの取扱いについては各SNSによってそれぞれ異なりますので、事前に確認しておく必要がありますのでご注意ください。

例文
(付言事項)

私が生前利用していたSNSアカウントについて、次のような処理を希望します。

Facebook→アカウントの削除 ID:000000 パスワード:000000

Twitter→追悼アカウントとしてそのまま残してください

Instagram→アカウントに鍵をかけ、そのまま残してください。ID:000000 パスワード:000000

6.臓器提供の意思表示をしたい時

本人が臓器移植を希望する旨の意思表示を書面で残す場合は付言事項として記載しましょう。

ただし現行制度上は、健康保険証や運転免許証に記載する方法もございます。

これ以外の意思表示の方法として、臓器提供する意思表示(尊厳死の場合を含む)の公正証書を別に作成する方法もありますので臓器提供について考えている方は遺言を書く際に併せて記載してくださいね。

例文
(付言事項)

私は、死後に身体を医学の発展に役立たせるべく、〇〇〇大学への献体を希望します。すでに、献体登録は済んでいます。また登録の際は妻○○の同意を得ました。献体後の遺骨については、妻○○に引き渡しをお願いします。

私は学生時代に献体に協力してくださった方から多くの事を学びました。その時献体を希望してくださった人がいたから、医師としての私があったのです。だからこそ私も献体に協力し、未来の医師の勉強に役立ててほしいのです。

どうか速やかに献体手続きが行われることを願っています。

7.生前贈与の理由を説明したい時

最後に、遺言者が相続人の一部に生前贈与している場合など、その理由等を説明して他の相続人に遺留分侵害額(減殺)請求をしないように希望する場合の付言事項をご紹介します。
この時気を付けたいポイントは「相続人が遺言を読んだ際に、納得できる文面」にすることです。円満に相続を終えるか、争いに発展してしまうのかは「伝え方次第」です。
だからこそ付言事項で 丁寧に想いを伝える必要があるのです。

例文
(付言事項)

私は生前、息子○○に不動産すべてを贈与しました。息子○○は家業を継いでくれ、私が所有していた不動産は事務所として使っていたためです。

そのため娘△△を始め、相続人には息子○○へ遺留分侵害額請求をしないでやってください。
一時は傾き、先の見えなかった家業もようやくまた息を吹き返してきたところです。家業は私の生きがいでもありましたから、それを守り続ける息子に協力してもらえると嬉しいです。

どうかこれからも家族みんな仲良く暮らしてくださいね。

まとめ

付言事項に記載されている内容は、法定遺言事項と違って法的拘束力はありませんが、遺言者の想いと本音を相続人等に伝える重要な要素ともなり、遺言事項の円滑な執行に寄与する効果を果たしていると思われます。

相続人間の争いを避けるためにも、付言事項は丁寧に、気持ちを込めて記載することが望ましいでしょう。

作成した自筆証書遺言書のリーガルチェックのみ承ることも可能です。

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