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法務局における遺言書の保管について

法務局における遺言書の保管について

蒸し暑い日々が続いておりますが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。

以前、本コラムの第7回 法務局における遺言書の保管等に関する法律にて法の概略を説明しましたが、この度、同法律(以下、「遺言書保管法」又は「法」という。)に関する政令、省令及び手数料令(いずれも令和2年7月10日施行)が定められ、遺言書保管についての関係法令が整いました。

そこで今回はその詳細をお伝えしたいと思います。

 

 

1.自筆証書遺言書の保管申請手続き

(1)申請する法務局の場所について

  1. 遺言者の住所地、遺言者の本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地[法第4条第3項]のいずれかを管轄する遺言書保管所[法第2条](法務省『遺言書保管所一覧』)の遺言書保管官[法第3条]に対して行います。
  2. 遺言書保管所は、全国の法務局・地方法務局の本局及び支局です(東京法務局のみ、本局、支局、板橋出張所の5カ所)。詳しくは法務省ホームページ内『東京法務局管内遺言書保管所管轄一覧』にて確認してみてください。その他保管所の具体的な管轄はこちらで確認できます。

(2)申請する人について

遺言書の保管手続きには必ず遺言者本人が法務局に出頭する必要があります[法第4条第6項]。

(3)その他の注意事項

法務局では、自筆証書遺言書の方式について外形的な確認を行いますが、遺言の具体的な内容についての相談等はできません

(4)遺言書保管申請に必要なもの

  1. 自筆証書遺言に係る遺言書[省令第9条、様式第1号]
  2. 申請書[省令第10条及び11条、様式第2号]
  3. 添付書類:本籍記載のある住民票等(3カ月以内のもの)[省令第12条]
  4. 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等)[法第5条、省令第13条]
  5. 手数料(収入印紙):1件につき3,900円

※申請手続きには事前予約が必要です。また、申請書等の様式についても法務省のホームページからダウンロードでき、遺言書保管所窓口にも備え付けられています。

(5)完了後の流れについて

申請が認められて遺言書の保管が開始されると、遺言書保管所の法務局から保管証が交付されます[省令15条、様式第3号]。

保管証交付までの期間は法務局によって違いますが、他の申請と同様に完了予定日が伝えられると思われます。

保管証の受領は、①申請した法務局の窓口に取りに行く方法と、②郵便料金を負担して、遺言者の住所に宛てて送付[省令第16条]してもらう方法があります。

(6)申請後に住所変更した場合

保管申請後に、遺言者の住所・氏名・本籍、受遺者及び遺言執行者の住所・氏名に変更があった場合は、遺言者はその届出をしなければなりません[政令第3条第1項、様式第6号]。

なお、変更の届出は遺言書が保管されている遺言書保管所以外の遺言書保管官に対しても提出できます[政令第3条2項]。

(7)遺言書の内容を確認したいとき

遺言者は自ら出頭して[法第6条4項]、預けた遺言書及び遺言書保管ファイルの閲覧ができます[法第6条第2項、政令第4条、省令第21条ないし24条、様式第4号]。手数料は画像の通りです。

※遺言書保管ファイルをモニターで確認する場合は、全国どこの遺言書保管所の遺言書保管官に対しても請求することが可能です[政令第4条第2項]。

(8)申請を撤回したいとき

遺言者は自ら出頭して、いつでも保管の申請の撤回をすることができます[法第8条、省令第25条及び26条、様式第5号]。

(9)申請書の内容を閲覧したいとき

遺言者は特別な事由があるときは、保管の申請、変更の届出及び撤回の申請に係る申請書等を閲覧することができます[政令第10条、省令第31条及び32条、様式第7号]。

(10)申請を取り下げたいとき

遺言書申請の取り下げは、遺言書の保管が開始されるまでの間であれば自ら出頭して行うことができます[省令第19条]。

2.遺言書の保管期間について

  1. 遺言書原本:遺言者の死亡の日から50年
  2. 遺言書保管ファイル:遺言者の死亡の日から150年

※遺言者の生死が明らかでない場合にあっては、遺言者の出生の日から起算して120年[法第6条5項、政令第5条第1項]

3.あとがき

以上、自筆証書遺言書の保管について、保管申請に係る方法等を説明しました。

しかしながら、ほとんどの書類の様式が決まっているため、ホームページからダウンロードして記載するか、法務局に出向いて申請書類等を受領して必要事項を記載しないと申請までたどり着かないことになります。

いずれにしても、遺言者本人が法務局に複数回足を運ぶ覚悟でいないと少し大変かなと思います。

私たちの事務所では、遺産承継業務を含む相続全般に関する部署がありますので、

お気軽にご相談くださいね。

次回は遺言書保管申請後、遺言者が亡くなられた後の手続きについて解説したいと思います。

法務局保管制度を利用して自筆証書遺言を作成したい方のサポートも承ります。

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