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第15回配偶者の居住権を保護するための方策 ② (新民法第1028条~1036条:長期配偶者居住権、令和2年4月1日施行予定)

第15回配偶者の居住権を保護するための方策 ② (新民法第1028条~1036条:長期配偶者居住権、令和2年4月1日施行予定)

 前回は、長期・短期の配偶者居住権の概要について説明しましたが、今回からは数回に分けて長期配偶者居住権(以下「配偶者居住権」という。)の利用が想定されるケースや取得要件、注意点(今回はここまで)、配偶者居住権の評価方法、登記の要否、消滅の事由などについて説明していきます。

1 配偶者居住権の利用が想定されるケース

 被相続人が、再婚して前妻との間に子供がいるなど、家族関係が複雑な場合は配偶者居住権の設定は残された配偶者の老後を守るためには有効な手法といえます。

 例えば、Aには前妻Bとの間に子Cがいます。その後Bと離婚(又は死別)し、Dと再婚後にAが死亡して相続が発生したというケースを考えてみます。

 生前、Aは家を子Cに相続させるが、配偶者Dには生前と同様にこの家で居住させたいとの思いがあったしても、仮に、家を相続した子Cが家の所有権を主張して配偶者を家から排除することも考えられ、配偶者の居住する場所が確保できないことが想定されます。

 そこで、新法施行後は、「配偶者Dには配偶者居住権を遺贈する、子Cには建物の所有権を相続させる」旨の遺言書を残しておくことによりAの希望が実現することになります。

⁂ 配偶者居住権のデメリット

 配偶者にとっては素晴らしい制度ですが、共同相続人である子にとっては、配偶者居住権付きの自宅所有権の取得となり、預貯金等の現金が目減りするなど、決して良いこととは言えません。仮に、子と配偶者の折り合いが悪ければ、これまで以上に遺産分割の場面でもめることが多くなることも予想されます。

 被相続人が遺言書を作成したり、生前贈与するなど、ほかの方法によって配偶者の生活を守れば、もめ事は少なくなると考えられるため、生前に家族間でよく検討するべきと思います。

2 配偶者居住権の取得要件

 配偶者が配偶者居住権を取得するには、以下の要件を満たす必要があります(新民法1028条1項)。

 ① 被相続人の財産に属した建物に

 ② 相続開始の時に

 ③ 居住していること、が大前提で、 かつ、

 ④ 遺産分割協議(同条1項1号) 又は

 ⑤ 遺贈(同条1項2号:遺言書に「配偶者Dに下記の自宅建物の配偶者居住権を遺贈する」などの記載がある。)があること  

 また、居住建物の一部を店舗や事務所、あるいは賃貸物件としていた場合でも、配偶者居住権は建物全体に及ぶとされています(1028条1項本文)。

 なお、居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合(例えば、父と子の共有、父・母及び子との共有)は、配偶者居住権を取得することはできません(1028条1項ただし書き)。

 居住の意義については、住民票上の住所が居住建物にあることが第一義的な考え方ですが、相続開始時に、施設や病院等に入所・入院していたなどの場合、実際には居住建物に住んでいなかったことになりますが、入所・入院などが一時的なものであれば居住していたとの判断もできることから、今後の実例を注視するべきと思います。

3 配偶者居住権の注意点

 配偶者居住権の取得要件は上記のとおりですが、注意すべき点があります。

①内縁(事実婚)の配偶者には認められないとするのが現時点での一般的な考え方です。

②配偶者居住権は遺産分割の対象となり、所有権より安い評価で計算される(具体的な計算例は次回説明)。

③婚姻期間が20年以上の配偶者が配偶者居住権を取得した場合は、特別受益として評価しない(持戻し免除)、つまり遺産として評価しない(1028条3項で903条4項を準用)。相続財産から除いて計算します。

④配偶者居住権は、「使用」できるだけでなく、建物所有者の承諾があれば、賃貸して「収益」を上げることもできます(1032条3項)。

 

⁂ 新民法1028条1項2号の「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」に取得するとの規定から、遺言書には「配偶者に遺贈する」と記載することが必要です。

 「相続させる」旨の遺言の場合は、配偶者が配偶者居住権を希望しないときにも、配偶者居住権のみを拒絶することができず、相続放棄をするほかないことになり、かえって配偶者の利益を害するおそれがあることなどに配慮したものと考えられます。

 遺贈であれば986条の規定により、放棄することが可能なため、遺言書の記載については留意する必要があります。

 

 次回は、配偶者居住権の評価方法について説明します。

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