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配偶者の居住権を保護するための方策 ①     (新民法第1028条~1041条、令和2年4月1日施行予定)

配偶者の居住権を保護するための方策 ①     (新民法第1028条~1041条、令和2年4月1日施行予定)

1.見直しのポイント

 このたびの相続法改正により、配偶者に新たな権利が認められることになりました。配偶者短期居住権と長期配偶者居住権(正式名称:配偶者居住権)の2種類が新設されます。

(1) 配偶者短期居住権:配偶者は相続開始時に被相続人の建物(居住建物) に無償で住んでいた場合には、①配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、居住建物の帰属が確定する日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日から6か月間は保証(新民法1037条1項1号)、②居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6か月(1037条3項、同条1項2号)の期間、居住建物を無償で使用する権利を取得する。⇒⇒詳細は後日コラムに掲載します。 

(2) 長期配偶者居住権:配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、①遺産分割における選択肢の一つとして(1028条1項1号)、②被相続人の遺言等(同条1項2号)によって、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利(配偶者居住権)を取得する。⇒⇒内容が多岐にわたるため以後数回に分けて掲載します。

2.現行制度

  配偶者の一方が死亡した場合、他方の配偶者は居住してきた建物に引き続き居住を希望するのが一般的と考えられます。

 共同相続人全員による遺産分割協議の結果、配偶者が居住建物を相続した場合には、高価な不動産を相続したことにより、預貯金等の他の財産を相続することができなくなり、その後の生活が維持できずに、結局は相続した不動産を売却することになったという事案が多く、問題視されていました。

 また、日本国民の平均寿命が延びたことにより、被相続人の死亡後も他方の配偶者が長期間生活を継続することが多くなってきている現状を踏まえると、配偶者の生活保障の観点からも、遺産の分配方法の検討が必要となっていました。

3.制度導入のメリット

 配偶者居住権が認められることにより、一般的には以下のようなメリットがあります。 

(1) 仮に遺産分割協議の結果、居住建物を相続できなかったとしても、最低  でも6か月間は居住建物に無償で住み続けることができます(配偶者短期居住権)。

  また、被相続人の遺言や共同相続人らの同意(遺産分割協議)があれば、配偶者が一定の期間又は終身の間、居住建物に住むことができます(長期配偶者居住権)。

⁂以後、長期の配偶者居住権を「配偶者居住権」と表記します。

(2) 配偶者居住権の制度では、配偶者は居住建物の「所有権」を取得するのではなく、「居住権」を取得することになります。

  また、配偶者居住権の価値評価については、簡易な評価方法が考えられており、所有権より安い評価として計算されることから、不動産以外の遺産を金銭等でより多く相続でき、老後の生活資金が確保できるようになります。

  残された配偶者にとっては、住む場所もあって、生活費も確保できるので安心して生活することができるようになります。

  次回は配偶者居住権取得の要件やメリット・デメリットなどについて、次々回は簡易な評価方法などについて掲載する予定です。

配偶者のご相続手続きでお困りの方は、一度ご相談くださいませ。

「主人が遺した多額の財産。特に株式の相続が気がかりです…」

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