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離婚・再婚歴がある方の相続とオススメの生前対策

離婚・再婚歴がある方の相続とオススメの生前対策

こんにちは。

司法書士法人リーガル・フェイスの栗田です。

昨今、高齢化が進み「配偶者が亡くなった後の再婚」の話題を耳にしたり、日本でも「離婚率・再婚率」、「熟年離婚の増加」、はたまた「コロナ離婚」といった内容の報道を度々目にするようになり、再婚や離婚を以前より身近に感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は再婚や離婚が相続に与える影響と再婚歴・離婚歴がある方の生前対策について考えてみたいと思います。


1.相続権はどうなる?


まずは再婚や離婚をされていた方が亡くなった場合、周囲の方々の相続権はどのようになるのでしょうか。
相続権の有無について次の表にまとめました。


相続人 相続権の有無
①元配偶者(離婚) ×
②元配偶者(離婚・死別含む)との間の子
③現配偶者(再婚相手)
④現配偶者との間の子
⑤現配偶者とその前配偶者との間の子(連れ子) ×

相続では被相続人(亡くなった方)の配偶者は常に相続人となります[民法890条]。

ただし大前提として、離婚の届出後は法的には「他人」です。よって「③現配偶者(再婚相手)」には相続権がありますが、「①元配偶者」の方に相続権はありません。

では子どもの相続権はどうでしょうか。
「②元配偶者(離婚・死別含む)との間の子」と「④現配偶者との間の子」の場合、②の方の親権者が誰であるか、また未成年か否か、にかかわらず「子」としての相続権があります[民法887条1項]。一方で、「⑤現配偶者とその前配偶者との間の子」(いわゆる連れ子)の方は、法律上の「子」には該当せず相続権はありません。

(「⑤現配偶者とその前配偶者との間の子」に相続権を持たせたい場合はこちら

2.揉める可能性大!?


あなたに再婚歴・離婚歴がある場合、あなたの死後、現配偶者側の相続人(③現配偶者及び④現配偶者との間の子)と、「②元配偶者との間の子」との間で連絡を取り合う必要が生じる場合があります。

遺言執行者を指定した遺言を遺した場合は、遺言執行者から任務開始時に遺言内容が通知され[民法1007条2項]、
検認手続が必要な自筆証書遺言を遺した場合は、家庭裁判所から検認期日が通知がされます。

一方遺言が無い場合、相続財産を処分するには相続人全員の同意を得る必要が生じ( 預貯金債権の一部を除きます[民法909条の2])、遺産分割協議を行うために他の相続人に連絡をとらなければなりません。
具体例として次のようなケースが考えられます。

①相続人全員を把握していない場合がある

例えばあなたに離婚歴があり、前配偶者との間に子がいることを傍にいた方が知らなかったとしたらどうなるでしょう。

あなたが亡くなった時点で傍にいた方が、相続人全員を把握していなかったり、そもそも相続人が何人いるのかわからないという事態に陥るかもしれません。

このような場合、戸籍や住民票等を役所で取得し、被相続人の相続人を調査・特定し、判明した住所にお手紙等を送付するなどの方法が考えられますが、その手続きは非常に煩雑です。
また、その煩雑な手続きを「誰が行うのか」ということでトラブルに発展する原因にもなるのでご注意ください。

②疎遠・初対面の場合も多い

あなたが再婚しており、現配偶者との間に子がいるとします。
しかし前配偶者との間にも子がおり、その子は離婚後に前配偶者と暮らしていたとしたら。
あなたが亡くなった後、その子同士が遺産について話し合うことになりますが、疎遠であったり初対面の可能性が高いと言えます。

相続人同士が何とか連絡を取り合うことができ、話し合う機会が持てたとしても、上記のような理由からお互いに見ず知らずであったり、長期間にわたり疎遠であったりする可能性もあります。あまり親しくない間柄の方と遺産について話し合うことは決して容易いことではないでしょうし、様々な事情から複雑な感情をかかえている場合も多く、トラブルに発展しやすい状況と言えます。

そして万が一、一部の相続人が「自分の相続分は本来の相続分より少ないのではないか」という疑念を持つに至ると“相続”が“争族”へと発展してしまう可能性も否定できない状況となります。

3.相続人のためにも生前対策を。

あなたが亡くなった後、周囲の方々が困らないよう、以下の生前対策を検討されることをお勧めいたします。

対策その1:推定相続人リストを作る

自分の推定相続人の氏名・住所・連絡先のリストを作成します。推定相続人の中で長年疎遠となっており住所や連絡先が不明な方がいる場合は、事前に親戚縁者から連絡先を教えてもらったり、戸籍や住民票等から住所等を調べたりしておいた方がよいでしょう。

相続人の連絡先を調べる手間が省けるだけでも、手続きを行う方の負担がグッと軽減されます。

 

対策その2:相続財産リストを作る


不動産、預貯金や有価証券などの金融資産、その他の財産及び負債など、マイナスの財産も含めてリストを作成します。また、大きな出費や誰かに立替えてもらった多額の費用があった場合は、その年月日や使途について証拠となるもの(領収書等)を保管しておきます。
とにかくあなたのお金まわりのことをすべて網羅したリストにすることがポイントです。


そして相続人の方々は、あなたの財産がプラスの方が多ければ相続を承認し、マイナスの方が多い可能性がある場合は相続放棄[民法939条]限定承認[民法922条]等の制度を検討することになります。

相続放棄や限定承認の制度を使うには、あなたが亡くなったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません[民法915条]。

その際に相続財産リストが無ければ、相続人の方々は時間的な制約がある中で自宅に届いた郵送物などを頼りにあちこちの金融機関に問合せたり、また場合によっては信用調査機関に問合せ、あなたの相続財産を確定させることになります。
あなたが主にネット取引で金融資産を管理されている場合は尚更、相続人が相続財産の把握に手間取ることが予想されます。そのためにもあなた自身の手で相続財産リストを作成しておくことはとても重要です。


対策その3:遺言書を作成する


遺言書では、自分の財産を遺す相手や内容等を指定できます。
遺す相手は、相続人以外の方でも、複数でも、未成年でも、また法人などの団体でも差し支えありません。さらに言えば、その分割方法は法定相続割合に拘わらず、あなたが承継させたい財産や割合を指定することもできます。また「遺言執行者」を指定し、遺言の内容を実現するための法律上の権利を特定の相続人や第三者に与えておくこともできます。

遺言書を書く際は遺留分に注意!

留意点として、「遺留分」があります。遺留分は、兄弟以外の法定相続人に民法によって保障されている最低限の相続割合です。
あなたが特定の法定相続人に対し、遺留分を下回る相続分を遺言書で指定して亡くなった場合、その方は「財産を譲り受けた人」に対して「侵害された遺留分に相当する金銭の支払」を請求することができます。正当な遺留分侵害額の請求であれば、請求を受けた人は支払う義務があります。そのため、予め遺留分を下回らないよう配慮した内容の遺言書を作成される方もいらっしゃいます。
詳しくはこちらの記事をご確認ください。
「遺留分とは? 債務は控除できる? 簡単、わかりやすく解説!」

また、遺言の形式としては次の四つの点で公正証書遺言がおすすめです。

①法律の専門家である公証人が遺言書の有効性を認証している

自分で準備する自筆証書遺言の場合、署名押印等の要式上の不備や遺言内容の曖昧さにより、残念ながら無効となってしまうケースもあります。しかし、公正証書遺言の場合は公証人が認証した法的に有効なものを作成できるため安心です。

②家庭裁判所による検認が不要

自筆証書遺言で尚且つご自宅で保管していた場合は、あなたの死後、相続人は遺言書を家庭裁判所へ提出し「検認」の手続きを受ける必要があります。
一方、公正証書遺言では検認が不要です。

③公証役場が原本を保管している

万が一遺言書を紛失したり隠匿されたりしても、あなたが公正証書遺言を遺していることさえ相続人が把握していれば、全国の公証役場で検索し確認することができます。

④公証人が遺言者の遺言書作成時点の判断能力を認証している

自筆証書遺言等の場合、長年疎遠となっていた相続人が、遺言作成時点での被相続人の意思能力の有無について問題視し、遺言の無効を主張する場合もあります。
公正証書遺言の場合、公証人が遺言者の意思能力があると認めた場合にのみ作成されるため、無効を主張されたとしても問題なく遺言の内容を実現できる可能性が高いでしょう。

対策その4:生命保険契約の死亡保険金を利用する

生命保険契約の死亡保険金は、保険をかけられる対象となっている「被保険者」が死亡した際に、事前に指定されていた「受取人」が、受取人固有の財産として受け取ることができる保険金です。
財産を渡したい相手を「受取人」に指定し、ご自身を「契約者及び被保険者」とする契約を結んだ場合、あなたが亡くなった際、その方は当然の権利として、遺産分割協議を経ることなく保険金を受け取ることができます。ただし、受取人が法定相続人の一人である場合、「他の相続人との間に生ずる不公平」が極端に大きいと、特別受益として相続財産の一部に算定される場合もあるので注意は必要です。

対策その5:養子縁組をする

「⑤現配偶者とその前配偶者との間の子(いわゆる現配偶者の連れ子)」など、「②元配偶者(離別・死別)との間の子」や「④現配偶者との間の子」と同じように相続させたい方がいらっしゃる場合、その方と養子縁組をするという方法があります。自分の養子に迎えた子は、実子と同じように相続権を持つことになります[民法809条]。

まとめ

再婚歴・離婚歴がある方の相続は、長年疎遠になっていた者や見ず知らずの者同士が当事者として話し合わなければならない場合があり、トラブルに繋がりやすい場合が多いと言えます。

あなたが亡くなった後に周囲の方々が困らないよう、事前にできる対策は極力あなた自身の手で進めておきたいものです。
実際に相続が発生すると、戸籍等による相続人調査など煩雑な手続きを要する場合も多くあります。生前対策を進める上でお困りごとがございましたら、当事務所でお手伝いさせていただきますのでお気軽にお問合せ下さい。

お子様がいらっしゃらないご夫婦から、遺言書作成の依頼を承った事例もございます。

「子どもがいないので、妻に全財産を残せるような遺言を作りたいです。」

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