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相続手続きをしなかったらどうなる?

相続手続きをしなかったらどうなる?

司法書士法人リーガル・フェイス北でございます。
今回は、「相続手続きをしなかったらどうなる?」のかについておまとめいたしました。

 

相続は突然起こるものだからこそ、相続財産の種類や手続きを行う相続人の事情によって相続手続が放置されてしまうことがあります。

しかしながら、相続手続きには期限が設定されているものもあり、放置することのリスクを考える必要がございます。

今回は、相続手続きをしなかったらどうなるのか、相続手続きを放置する危険性やデメリットなども含めて解説いたします。

 

 

 

1 期限のある相続手続きとは

身内の方が亡くなった場合、様々な手続きが遺族の方に降りかかって参ります。
なかでも、期限のある手続きはその期限に遅れないよう、期限にも注意しながら手続きを進める必要があります。

期限のある代表的な相続手続きは以下の通りです。一つずつ確認をしていきましょう。

 

① 相続放棄
② 準確定申告
③ 相続税申告
④ 相続登記
⑤ 生命保険金の請求

 

上記について具体的に見ていきましょう。

① 相続放棄

相続放棄の手続きは、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」にする必要があります。

 

相続放棄とは、家庭裁判所で手続きすることにより、はじめから相続人ではなかったことになる手続きです。亡くなった人が借金を抱えていた場合、その借金は原則として相続人が引き継いで返済をしていかなければなりません。

 

そういった場合に、相続放棄を行うことで借金を引き継がずに済むことになります。但し、相続放棄をすると、借金などのマイナスの財産のみならず、プラスの財産も一切引き継げなくなる点に注意が必要です。例えば、自宅の不動産は引き継ぎたいけれど借金だけを放棄したいということはできません。

② 準確定申告

準確定申告とは、亡くなった人の確定申告です。
毎年の確定申告は、1月1日から12月31日までの所得を翌年2月16日から3月15日までの間におこなうのが原則です。  

 

一方、亡くなった人の確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内とされています。通常の確定申告とは期限が異なるため、注意が必要です。準確定申告はすべての人にとって必要なわけではなく、被相続人に申告すべき所得があった場合のみ必要です。

 

不動産所得や事業所得などがあり、毎年確定申告をしていた場合や、亡くなる直前に不動産など大きな財産を売却した場合などに申告義務があることが多いといえます。準確定申告が必要かどうか迷った際には、相続が発生してからなるべく速やかに、税理士などの専門家か管轄の税務署へ確認すると良いでしょう。

③ 相続税申告

相続税とは、被相続人が亡くなった時点で持っていた財産などに対してかかる税金です。

 

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内にする必要があります。ただし、相続税は遺産総額に過去の一定の贈与を合計した「課税価格の合計額」が相続税の基礎控除額以下であればかかりません。相続税の基礎控除額の計算方法は、次のとおりです。

 

【相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数】

 

相続税の申告にあたっては、特例の適用等の論点もありますので、税理士に相談することが望ましいと言えます。

④ 相続登記(相続登記の義務化は2024年4月から)

本コラム掲載時(2023年8月時点)においては、相続登記は義務ではありません。
しかしながら、相続登記をしないまま長期間経過すると、相続人についてさらなる相
続が発生して権利関係がさらに複雑になり、最終的に所有者を特定することができなくなってしまうということが問題となっていました。

 

全国にはこのような所有者不明の土地が多数存在し、東日本大震災の復興事業の妨げとなったり、空き家問題・空き地問題を発生させています。
そういった問題の解決方法として、相続登記義務化の法案が成立しました。
詳しくは、次項2.「相続登記の義務化について」のなかで解説いたします。

⑤ 生命保険金の請求

相続が起きたことで保険請求の対象となった場合であっても、保険請求権は死亡した 日の翌日から3年で消滅時効にかかります。

 

時効にかかってせっかくの保険金が受け取れなくなってしまうことのないように、相続が起きたらできるだけ早期に請求を済ませておくと良いでしょう。

 

なお、保険会社によっては時効期間が過ぎても支払いに応じる可能性もありますので、生命保険契約が明らかになった段階で速やかに保険会社に問い合わせをしましょう。

 

2.相続登記の義務化について

前項で少し触れましたが、今まで義務ではなかった相続登記について、2024年4月1日からは義務となります。

では、義務化前に相続が発生しているケースには登記の義務が適用されるのでしょうか。

この「相続登記を義務とする法案」は次の方にも適用される予定です。

 

1. 改正法の施行後に相続が開始した方
2. 改正法の施行前に相続が開始した方

 

「1」の方に適用されるのは当然かと思いますが、注意が必要なのは「2」の方です。義務化施行前にすでに相続が開始している方にも新しい法律は適用になります。
(附則案 経過措置)

 

第五条六項第二号

新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。
(以下省略)民法等の一部を改正する法律案|法務省

 
相続登記をしないと罰則があるのかということも気になる点かと思います。

罰則は、最高で10万円の過料が予定されています(不動産登記法案164条の2第1項)。 しかし罰則も常に適用されるわけではありません。
いま相続登記が未了の方が、罰則の適用を受けないようにするには何をすればよいのでしょうか。

考えられる方法は次の4つです。

 

⒈ 遺産分割協議をして相続登記を申請する
⒉ 相続人の一人から法定相続分通りの相続登記を申請する
⒊ 改正法施行後に「相続人である旨の申出」をする
⒋ 相続放棄をする

 

⒈ 遺産分割協議をして相続登記を申請する

相続登記が未了ということは、遺産分割の話し合いが終わっていないというケースが多いと思いますが、その理由はいくつか考えられるでしょう。

 

協議が平行線で紛争になっている、相続人が行方不明であったり、認知症であったり、外国に住んでいたりなど様々な要因が考えられますが、それぞれに解決法があります。

まずは専門家に相談をしてみましょう。

⒉ 相続人の一人から法定相続分通りの相続登記を申請する

あまり知られていないことですが、法定相続分通りであれば、他の相続人の同意を得ることなく、相続人の1人から相続登記を申請することができます。

⒊ 改正法施行後に「相続人である旨の申出」をする

こちらの方法は相続登記の代わりに簡易的に認められる予定の手続です。

 

管轄の法務局に対して「相続人である旨の申出」をすれば、たとえ相続登記を行わなくても、罰則の適用を免れるという制度になります。

 

こちらの制度については、「相続人申告登記」という制度になりますが、以下のコラムで詳しく説明しておりますのでご参考になさっていただければ幸いです。

【新制度】相続人申告登記とは?相続登記をすぐに申請できない場合の選択肢  | 新宿で相続や遺言の無料相談なら司法書士法人リーガル・フェイスへ (l-faith.com)

⒋ 相続放棄をする

自分が相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所で手続きをとれば、相続人の資格を喪失することができます。そうすれば相続登記の義務もなくなるので罰則が科されることもありません。

 

相続放棄手続きについては以下のコラムも参考にしていただければと思います。

相続放棄はどうやるの? やり方まとめ【四コマつき】 | 新宿で相続や遺言の無料相談なら司法書士法人リーガル・フェイスへ (l-faith.com)
【続】相続放棄はどうやるの? 具体的な申述方法まとめ  | 新宿で相続や遺言の無料相談なら司法書士法人リーガル・フェイスへ (l-faith.com)

 

3 相続手続き放置の問題点

各種相続手続きの放置のリスクですが、各種手続きことに様々なリスクがあります。

税金の申告をしないでいた場合

申告義務があるにもかかわらず、申告をしないまま準確定申告や相続税申告の期限を過ぎてしまった場合には、次のようなリスクが生じます。


①無申告加算税や延滞税が課税される

本来の申告期限までに申告や納税をしなかった場合には、利息としての意味合いを持つ「延滞税」と、ペナルティとしての意味合いを持つ「無申告加算税」が課税されます。

 

また、悪質とされた場合には無申告加算税よりも更に重い重加算税が適用されます。
無申告のペナルティはかなり重いものとなっていますので、申告が必要な場合には必ず期限内に申告と納税を済ませるようにしましょう。


②期限内に申告すれば使えたはずの特例が使えなくなる

相続税には、税額を抑えることのできる特例がいくつか存在します。
中でも税額への影響が大きなものは、Ⅰ.小規模宅地の特例(土地を最大8割減で評価して相続税を計算できる特例) Ⅱ.配偶者の税額軽減(配偶者が相続で取得した財産のうち、配偶者の法定相続分相当額か1億6,000万円のいずれか大きな額までは相続税が無税となる特例)の二つです。


ただし、これらの特例は、期限内に申告することが適用要件の一つとなっています。申告期限内に申告しなかったことで特例の適用機会を逃してしまえば、納付すべき相続税が大きく増えてしまう可能性がありますので注意が必要です。

 

相続登記を行わないリスクについて

相続登記を放置している間に相次ぐ相続が起きてしまい、相続関係が複雑になるという問題があります。さらに、相続は発生していないまでも相続人の一人が認知症になってしまったという場合は遺産分割協議のために成年後見申立ての手続きも必要となります。

 

相続登記義務化の前であっても相続登記は早めに済ませておいた方がいいでしょう。
年数の経過により代替わりが起きたり相続人の事情が変わったりすると、相続登記の考え方も異なりなかなか意見がまとまらないということもよくあります。

 

相続登記は名義を取得することが決まった時点で、できるだけ早期に済ませておいたほうが良いといえます。

 

預貯金や株式の名義変更や解約を放置する場合にデメリットとは

 

預貯金の解約や株式など有価証券の名義変更などの手続きには、特に期限はありません。
しかし、手続きをしないことには原則として預金を引き出したり有価証券を売却したりすることはできませんので、早期に手続きをしておくべきでしょう。

 

株式などの有価証券は原則として故人名義のままでは売却をすることができず、いったん相続人など株式を引き継いだ人に名義変更をした後に売却の手続きをする必要があります。
株価の変動などで急いで売却しようとしても、故人名義のままではすぐに売却ができず、機を逸してしまうかもしれません。

 

また、預貯金は10年間取引がなければ休眠口座に移行しますが、その後も所定の手続きを踏めば引き出すことは可能です。
ただし、あまり長期間取引がない場合には、手続きがより煩雑になったり、手続きから引き出しまでに時間を要することとなったりする可能性もありますので、注意しましょう。

 

4 まとめ


相続手続きの中で、期限のある手続きを期限内に終えるべきことはもちろんのですが、特に期限が定められていない手続きであっても、権利関係が複雑になる前に、できるだけすみやかに手続きを済ませておくべきでしょう。
司法書士法人リーガル・フェイスでは、今回記したような様々な相続手続きの代行も行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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