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【新制度】相続人申告登記とは?相続登記をすぐに申請できない場合の選択肢 

【新制度】相続人申告登記とは?相続登記をすぐに申請できない場合の選択肢 

こんにちは。相続課の近藤です。

リーガル・フェイスでは、これまでに令和6年4月1日からと迫ってきた相続時義務化に関するコラムをいくつか掲載してきましたが、今回は相続登記義務化と同時に施行される「相続人申告登記」についてお話ししたいと思います。

1.背景

日本では全国的に所有者不明の土地が年々増加しており、国交省の調査ではその割合が国土の22%にも及ぶと報告されています。さらに、この原因として大半以上を占めるのが「相続登記の未了」であるとの事です。この現象は高齢化の進展による死亡者数の増加等により、今後ますます深刻化するおそれがあるといわれています。

この所有者不明土地増加の対応策として「相続登記の義務化」が施行されるわけですが、その他にもいくつか新設される制度の一つとして今回ご紹介する「相続人申告登記」と呼ばれるものがあります。

2.相続人申告登記とは?

①相続登記義務化と相続人申告登記

上記の相続登記義務化によって、相続発生がわかった日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなりました。正当な理由なくこの義務に違反した場合、10万円以下の過料の適用対象となることも決まっています。

しかしながら、相続登記を申請するには決して少なくない資料(戸籍謄本等)の収集から始まり、場合によっては相続人間の意見を取りまとめて遺産分割を執り行うなど、往々にして煩雑となる手続きをクリアしなければなりません。

そこで、登記の手続的な負担を軽減させるために考えられたのが「相続人申告登記」という制度です。

②どうやって申告するの?

法務局において、次の2点を登記官に申し出ることになります。

  • 登記簿上の所有者について相続が開始したこと
  • 自らがその相続人であること

必要書類は下記の通りです。

必要書類

・登記簿上の所有者の死亡の旨が記載されている除籍謄本

・被相続人(死亡した方)とのつながり(相続関係)がわかる申出人の戸籍謄本

・申出人の住民票

通常の相続登記では、被相続人の出生から死亡までつながるすべての戸籍や相続人全員の戸籍、被相続人の住民票の除票など必要書類が多岐にわたることと比べると、相続人申告登記の必要書類は非常にシンプルになっています。

また、相続人申告登記は非課税とされています。

こちらも、通常の相続登記の登録免許税(原則、不動産価格×0.4%)と比べると申告のハードルを下げる要因となるでしょう。

③誰が申告できるの?

登記名義人の法定相続人が申告する事になります。

複数の相続人がいる場合、そのうちの1人が申告することも可能ですしもちろん相続人全員で申告することもできます。

④申告をするとどうなるの?

申告をした相続人の氏名・住所が登記官の職権により登記されます。

覚えておかなければならない点としては、通常の相続登記とは違い相続人申告登記は所有権が被相続人(死亡した方)から申出人に移転した事を公示するものはなく、あくまで 登記名義人が死亡した事とその法定相続人(の全員又は一部)を公示するものに過ぎないという事です。

権利関係を公示するものでは無いので、相続人が複数いる場合でも持分割合も登記されない、簡易的・報告的な登記です。

しかしながらこの相続人申告登記をすることによって、相続登記の履行義務を果たした事となり、過料の心配は無くなります。

また、相続人申告登記は本来の相続登記申請を期限内(3年以内)に果たせない場合に暫定的に行い、過料を免れることができるというものですので、相続人申告登記を完了したとしても最終的には改めて本来の相続登記をすることで初めて権利関係が公示される事も覚えておきましょう。

まとめ

さて、今回は「相続人申告登記」についてお話しさせて頂きました。

相続登記の義務化に伴って新設される制度は他にもいくつかあり(所有不動産記録証明制度・相続土地国庫帰属制度など)、このいずれもがコラム冒頭に記載した所有者不明土地増加の対応策として考えられた制度です。

「相続登記義務化」と一口で言うと我々一般市民の負担が増えるだけのように聞こえてしまいますが、手続的・費用的負担を軽減させ相続登記の促進させる制度も新設されており、

相続人申告登記もそのひとつです。

また別の機会に他の制度についてもご紹介し、相続登記に対する皆様の不安解消の一助となればと思っております。

法改正の絡んだ新制度で、現時点で施行されていないものばかりですので詳細が未定の分野もありますが、新情報を引き続き発信させて頂きます。

相続登記が2024年より義務化されますので、名義変更せず放置している不動産がございましたら一度ご相談くださいませ。

「父の相続登記をしないまま、50年が経過しています。相続人の特定も難しく、困っています…」

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