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公正証書遺言はどうやって作る?遺言のデジタル化についても解説!

公正証書遺言はどうやって作る?遺言のデジタル化についても解説!

多様性が叫ばれる現代社会ですが、家族の在り方もその例外ではありません。
家族の在り方の多様化に伴い、遺言の需要も年々高まっています。


「誰に何をどれくらい遺したいのか」
遺言は、自分の遺志を実現させる手段のひとつです。

 

今回は、そんな遺言のうち「公正証書遺言」についてお話ししようと思います。

 

この記事を読むと・・・

★公正証書遺言の作成手順がわかる!

 ★公正証書遺言の手数料がわかる!

 ★遺言デジタル化の現状がわかる!

 

 

1 公正証書遺言とは

 

遺言の方式のひとつに、「公正証書遺言」(こうせいしょうしょいごん)と呼ばれるものがあります。
公正証書遺言とは、遺言をのこす人(遺言者)が公証役場の公証人に対して遺言の内容を伝え、公証人がその内容を文書化し、証人2名の立ち会いのもとで内容に間違いがないかどうかを確認した上で、遺言者が署名・捺印をし作成される遺言を指します。


遺言者が自分で筆記する「自筆証書遺言」と比べ、費用は掛かりますが公文書として強い効力を持ち、内容面においても何かの不備により無効となる恐れの少ない、信頼性の高い方式の遺言と言えます。


公正証書遺言と自筆証書遺言の比較はこちらをクリック

 

ひとくちメモ:公証役場ってなに?

法務省が管轄する機関で、全国で約300か所設置されている。                            

主に、公正証書(高い証明力・執行力を持つ公文書)の作成や私文書の認証などを行っている。

公証役場に在籍している公証人は、法務大臣が任命した準国家公務員である。

 

2 公正証書遺言の作成手順

①公証役場に遺言作成の依頼


公証役場に連絡し、公正証書遺言を作成したい旨を伝えます。
どのような遺言を作りたいかの概要も伝えるため、あらかじめ自分の主な財産や誰に何を遺したいかなどのメモ書きを作成しておくとスムーズです。


また、その際に公証役場から必要書類を伝えられますので、改めて準備するようにしましょう。
なお、基本的にはどこの公証役場でも対応してもらえますが、公正証書遺言作成日には公証人との面談が必要となりますので、自宅の最寄りなどご自身にとって都合のいい公証役場を選ぶといいでしょう。

 

②必要資料の収集・提出

遺言内容に応じて必要書類は変わりますが、一般的なものは以下の通りです。

 

 ●遺言者の本人確認資料(印鑑証明書+実印または運転免許証・マイナンバーカード等
  の顔写真付本人確認資料+認印)
 ●【財産を遺す相手が自分の法定相続人の場合】
   遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本
 ●【財産を遺す相手が自分の法定相続人以外の場合】
   相手(受遺者)の住民票
 ●【遺言対象に不動産がある場合】登記簿謄本・固定資産納税通知書(評価証明書)
 ●【遺言対象財産に預貯金がある場合】預貯金等の通帳
 ●【遺言執行者を選任する場合】遺言執行者の住民票

 

上記必要書類を取り揃え、公証人に提出します。
具体的な遺言内容についても公証人と打合せを進めることになりますが、公証役場への往訪はもちろん、メールでのやり取りでも対応してもらえます。

 

③遺言(案)の作成・修正

公証人は、遺言者との打合せ内容や提出された資料に基づき、公正証書遺言の案文を作成します。

作成された案文はメール等により遺言者に提示されるので、遺言者はその案文を確認し、適宜修正したい箇所などをやり取りした上で遺言内容を確定させます。

 

④証人の依頼

公正証書遺言の作成にあたっては、2名の証人の立会が必要です。
遺言作成日に必ず同席が求められるので、あらかじめ誰を証人にするか決めておかなければなりません。
この「証人」については、自分の知り合いでもいいいですし、公証役場に紹介してもらう事もできます。

 

注意:以下の人は公正証書遺言の証人となることができません


●未成年者
●自分の相続人、受遺者(財産を遺す相手)、これらの配偶者および直系血族(両親・子など)
●公証人の配偶者、四親等以内の親族、書記及び使用人

 

⑤遺言作成日時の予約


遺言内容が確定したら、実際に公正証書遺言を作成する日時を公証人と相談し、事前に予約します。
場所については、遺言者が公証役場へ往訪するケースが一般的ですが、遺言者の体調や年齢等の事情により、公証人に自宅や病院等まで出張してもらう事も可能です。

 

⑥公証役場等にて遺言作成


作成日当日は、遺言者・公証人・証人2名が揃ったら、遺言の内容を確認するため、公証人が遺言を読み上げます。

遺言者と証人は、公証人があらかじめ用意している公正証書遺言の正本と謄本を閲覧しながら、公証人が読み上げる遺言内容を確認します。
遺言の内容に間違いがない場合、出席した当事者全員が署名・捺印をすることで公正証書遺言が完成します。

 

なお、証人以外の人は例え親族であってもこの場の立会を認められていないので、席を外して頂く運用が行われています。

また、公正証書遺言の原本は公証役場が保管し、遺言者にはその場で正本と謄本が1通づつ交付されます。

 

⑦公正証書遺言の手数料

 

公証役場に支払う手数料は、遺言の目的である財産の価額に応じて以下のように定められています。

 

目的の価額遺言に記載する財産の額

基本手数料

100万円まで

5000円

100万円超200万円まで

7000円

200万円超500万円まで

11000円

500万円超1000万円まで

17000円

1000万円超3000万円まで

23000円

3000万円超5000万円まで

29000円

5000万円超1億円まで

43000円

1億円超3億円まで

4万3000円+財産額5000万円までごとに1万3000円加算

3億円超10億円まで

9万5000円+財産額5000万円までごとに1万1000円加算

10億円超

24万9000円+財産額5000万円までごとに8000円加算

 

●財産を取得する人(相続人又は受遺者)ごとに,取得する財産額に上記の表の基準を適用して手数料を算出し,これを合計します
●財産額のうち、不動産については固定資産評価額により、金融資産(預貯金・株式等)については、その残高や時価により算定します
●財産額が1億円以下の場合、表記載の手数料とは別に11,000円が加算されます
●公正証書遺言作成時に交付される正本・謄本の交付手数料(1枚あたり250円)が別途かかります
●遺言者の病床で公正証書遺言を作成する場合、表記載の手数料に50%加算されることがあります
●公証人が自宅や施設等に出張する場合、日当と交通費がかかります

 

3 公正証書遺言の作成サポートを専門家に依頼する選択肢


どのような遺言にするかといった内容面の相談をはじめ、公証役場とのやり取りや必要書類の手配について、司法書士や弁護士などの専門家へサポートを依頼するやり方があります。
専門家のサポートも受けつつ遺言案を作成でき、公証人との打合せ・スケジュール調整や作成当日の証人の手配も任せることができます。
スムーズかつ安心して遺言の作成ができますので、ご不安のある方はご検討ください。


【リーガル・フェイスの公正証書遺言作成サポートはこちら】

 

4 遺言のデジタル化

①デジタル化の背景と現状

さて、そんな公正証書遺言ですが、実は手続きのデジタル化開始が決定しています。
従来、遺言を含む各公正証書の作成においては、対面・書面での手続きが必須とされ、いわゆるウェブ面談や電子ファイルの利用などのデジタル化については未対応でした。


しかしながら、情報通信技術の進展・普及した社会情勢に伴い、遺言制度を国民全体がより一層利用しやすいものとする観点から、法務省はデジタル遺言の導入に向けて法制審議会を立ち上げ、令和7年12月までにデジタル化開始(改正公証人法等の施行)を決定しています。

※自筆証書遺言についてもデジタル化の検討が進められております。
 こちらに関しても制度概要がわかり次第お伝えさせていただきます。

 

②公正証書遺言のデジタル化の概要


法務省は、公正証書に係る一連の手続きのデジタル化の概要として、
「公証役場に出頭せずにウェブ会議・電子署名を利用して公正証書を作成することや、証明書関係を電子データで受領することが可能となる」旨を掲げています。
法務省HP

本人確認

従来、公証人が遺言者と面識がない場合は、印鑑証明書の提出などの方法により人違いの無いことを証明していました。
デジタル化により、印鑑証明書の提出以外に、署名用電子証明書等の提供によって本人確認を行なう旨を整備しています。
さらに、第三者による「なりすまし」を防ぐため、公証人が以下の確認を行なう事も想定されているようです。
 

・身分証明書を提示させた上で、その顔写真とビデオ通話の画面上の遺言者との顔を照合する。また、映像に不正な加工が施されていない事も確認する
 ・必要に応じて生年月日その他の事項について質問する
 ・遺言者の了承を得て、ビデオ通話のキャプチャを保存する

 

利害関係者の関与を防ぐ方策


公正証書遺言作成の際は、遺言者の自由な意思の下で真意を述べる環境を確保する必要があるため、利害関係者が同席することはできません。
そのため、ビデオ通話においても、遺言者がカメラを動かして周囲に誰もいないことを公証人に確認させるなどの方策が検討されています。

 

署名・押印に代わる措置

従来は、公証人が作成した公正証書遺言の内容を遺言者や証人が確認した後、公証人・遺言者・証人が公正証書に署名・捺印をしていました。
デジタル化以降は、電子署名や電子サイン等の電磁的方法で従来の署名・捺印に代えるとされています。

 

公証役場への手数料のキャッシュレス決済

こちらは既に(令和4年4月1日~)クレジットカード決済が利用できるようになっています。

公正証書遺言の原本とその正本・謄本の電子データ化

公証役場において公正証書遺言作成の手続きを行う場合、公証人から遺言者に対して公正証書遺言の正本・謄本が各1通交付されます。

 

デジタル化にあたっては、

 

 ●公正証書に記録されている事項を記録した電磁的記録(公正証書に記録されている
  事項と同一であることを公証人が証明したもの) 
  → 従来の「正本」に相当
 ●公正証書に記録されている事項の全部または一部を記録した電磁的記録
  → 従来の「謄本」「抄本」に相当

 

が提供される事になります。

 

ひとくちメモ:会社設立時の電子定款認証はすでにウェブ対応済み!

令和6年3月1日より、会社設立時の電子定款の認証における公証人の審査(本人確認や会社設立の意思確認)についてはウェブ面談が原則になった。

それに伴い、従来通り公証役場での対面審査を希望する場合は、当面の間「ウェブ会議の利用を希望しない旨の申告書」を提出しなければならなくなっている。

 

5 さいごに

今回は遺言の方式のひとつである公正証書遺言と、そのデジタル化の現状についてご紹介させていただきました。


遺言は利用人数が年々増えてこそいるようですが、それでも「遺言があれば・・・」と思わされる相続の場面によく遭遇するのも事実です。


もちろん遺言制度は万能なものではありませんが、自分自身の相続の際に遺言の有無でどのような影響があるか、元気なうちに一度考えてみてもいいかもしれませんね。

 

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