こんにちは。
司法書士法人リーガル・フェイスです。
相続の手続きのために相続人同士で話し合いを始めたものの、話し合いがまとまらない場合には、遺産分割協議は成立しないことになります。
このような場合、相続人はどのような手続きをとることができるのでしょうか。
今回は遺産分割協議がまとまらない場合の手続きについて説明します。
1.遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、法律で定められた相続人の全員が参加し、遺産の分け方を決定する手続です。
遺産分割協議には、相続人全員の合意が必要であり、1人でも反対している相続人がいる場合には、遺産分割協議は成立しません。
相続人間で話し合いがつかない場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を申し立てることができます。
(民法907条2項本文)
遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
2.遺産分割調停とは
(1)手続の概要
遺産分割調停は、相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合に、家庭裁判所の関与の下で遺産分割の合意を目指す手続です。
調停手続では、調停委員会が、申立人と相手方から事情を聴いたり、資料を提出してもらったりして、遺産として分けるべき財産を確定し、その評価額を定めたうえで、分割の割合や方法などについての希望を聴き、解決のための必要な調整を行いながら、合意を目指して話し合いを進めます。
(2)手続の流れ
①必要書類の準備
必要書類を準備して、管轄の家庭裁判所に提出します。申立てに必要な主な書類は下記のとおりです。
□申立書1通及びその写しを相手方の人数分
□事情説明書
□進行に関する照会回答書
□被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
□相続人全員の戸籍謄本
□相続人全員の住民票又は戸籍附票
□遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書,預貯金通帳の写し又は残高証明書,有価証券写し等)
②申立て
申立人以外の相続人全員が相手方として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。
③期日の連絡
申立てから2週間程度で、家庭裁判所から調停期日通知書が届きますので、通知書に記載された期日に家庭裁判所へ出頭します。
調停は平日の昼間に行われ、1回の時間はおおむね2時間程度です。
④調停期日
調停期日当日は、家庭裁判所の調停室で、調停委員と話し合いを進めていきます。
調停期日は1か月から2か月に1回程度の間隔で設けられ、合意に至るまでおよそ1~2年程要します。
⑤調停成立
合意が成立すると、裁判所が調停調書を作成します。
調停調書は合意の内容を証明する書類であり、遺産分割協議書と同じ効力をもちます。
相続人は、この調停調書をもとに不動産の名義変更や預貯金の解約といった相続手続をすすめることができます。
⑥調停不成立
調停を重ねても合意に至らない場合は、調停が不成立となり、自動的に手続が審判に移行されます。
調停が不成立で終了した場合、調停申立ての時に遺産分割の審判の申立てがあったものとみなされるため、当事者からの申立ては不要です。
また、調停の終了は裁判ではありませんので、不服申立てはできません。
3.遺産分割審判とは
話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続が開始され、裁判官が、双方から聴取した事情や提出された資料等一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
審判手続きは原則非公開であり、また、家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ必要と認める証拠調べをしなければならないとされています。
家庭裁判所は、審判手続が進行する中で、裁判をするのに熟したと判断したときは、審判をします。
遺産分割審判に対しては、審判の告知を受けた日の翌日から起算して2週間以内に即時抗告をすることができ、即時抗告を行わずに2週間が経過すると、審判が確定します。
審判が確定すると、審判書をもとに相続手続を進めることができます。
4.調停または審判による遺産分割協議があった場合の相続登記手続
調停(審判)が成立すると、家庭裁判所の作成する調停調書、審判書をもとに相続手続を進めることができます。
通常の相続手続との主な異同は下記のとおりです。
(1)戸籍等が不要
通常の相続による登記手続の場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要となりますが、調停または審判があった場合の相続登記では、調停または審判のなかで相続関係は明らかにされているため、登記の際には被相続人の戸籍謄本は原則不要となります。
代わりに、登記の原因を証するため、申請人が不動産を取得する旨が記載された調停証書の謄本または確定証明書付の審判書謄本が必要となります。
(2)不動産を取得する相続人による単独申請が可能
調停(審判)が成立すれば、以後は他の相続人の協力を得ることなく、遺産分割協議書を提出して行う相続登記と同じように、不動産を取得する相続人による単独申請が可能です。
5.おわりに
以上、遺産分割協議がまとまらなかった場合の手続きについて、概略を説明しました。
リーガル・フェイスでは相続登記のサポートをさせていただいておりますので、お困りごとがありましたらご相談ください。

埼玉県熊谷市出身。司法書士の"争いが起こらないようにする仕事である"という業務内容に魅力を感じ、勉強を開始する。アルバイトをしながら資格勉強に励み、数年後に司法書士資格を取得。都内司法書士法人、会計事務所での経験を経て2022年リーガル・フェイスへ入所。趣味は美味しいものを食べながらビールを飲むこと。高校時代は野球部、大学時代は混声合唱サークルに所属。好きな食べ物は唐揚げ、ハンバーグ、カレーなど。