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遺言と異なる遺産分割協議

遺言と異なる遺産分割協議

みなさま、こんにちは。相続部署の北でございます。

今回は、「遺言と異なる遺産分割協議」について記事を書かせて頂きます。

相続が発生した場合、私たちがまず確認させて頂くことは、お亡くなりになった方が遺言をのこされていたかということです。

もちろん、遺言の存否については相続人には判然としないケースも多くありますので、その場合には公正証書遺言の存否確認についてもお手伝いさせて頂いております。

遺言は、財産をのこす人にとって自身の財産の処分方法を定める最後の意思表示であり、相続手続きにおいては、原則として相続人の意思よりも優先されます。

しかしながら、必ずや遺言の内容通りの相続手続きをしなければいけないのでしょうか。

そこで、今回は「遺言と異なる遺産分割協議」について詳しくお伝えいたします。

1.遺言と遺産分割協議の関係

遺言は、遺言者の最後の意思表示であり、原則として遺言内容に従う必要があることはご説明した通りですが、一方の遺産分割協議は、遺産をどのように分けるかを相続人全員の合意により決める手続きとなります。遺産分割協議では、相続人全員の合意があれば、誰が何を相続するのかを自由に決めることができるのですが、相続人の意見が一致せずに揉めるケースもあることも事実です。

なお、遺言により具体的に誰が何を相続するのか指定されていない財産がある場合も、遺産分割協議を行う必要があり、その意味では、遺産分割協議は遺言を補完する機能もあると言えます。

それでは、実際にのこされた相続人全員が遺言と異なる分配を希望し、それについて合意が得られる場合にまで、常に遺言に縛られる必要があるのでしょうか。

次のパートでは、遺言とは異なる遺産分割協議をすることはできないケースについての詳細を確認して参ります。

2.遺言とは異なる遺産分割協議ができない場合

下記のような場合は、遺言と異なる遺産分割協議をすることができません。

 ➀遺言で遺産分割協議が禁止されている場合

 ②「相続人と受遺者」全員の合意が無い場合

 ③遺言執行者の同意が無い場合

 

 もう少し詳しく見ていきます。

①「遺言で遺産分割協議が禁止されている場合」

 

遺言をのこす人からすれば「遺言のとおりに分配してほしい」「相続人によって、その内容を覆されたら困る」という場合もあるかと思います。遺言をのこす際に、遺産分割協議を禁止する旨を遺言に盛り込むことにより、遺産分割協議を禁止することができます。

民法907条では、「被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる」と規定しています。そのため、遺言で遺産分割協議が禁止されていないことが遺産分割協議による相続の前提となります。

②「相続人と受遺者」全員の合意が無い場合

相続人や相続人以外の受遺者の全員が遺言の内容に納得しておらず、遺言とは異なる遺産分割方法に合意した場合については遺産分割協議による相続が認められます。

ここで注意しなければならない点は「相続人以外の受遺者」の合意も必要になる点です。

遺言で相続人以外の第三者に財産を遺贈することが書かれている場合は、その受遺者が遺産分割協議による相続に合意する必要があります。

③「遺言執行者の同意が無い場合」

遺言をのこす際には、遺言執行者という、「遺言の内容を実現するためにその内容を執行する者」を選任することができます。

遺言執行者が選任されている場合に、遺言とは異なる内容の遺産分割協議をするためには、相続人全員の合意だけでは足りず、遺言執行者の同意も必要となります。

ただ、実務上、相続人の一人が遺言執行者として指定されているケースも多く、その場合は、相続人である立場の遺言執行者が遺産分割協議をすることに反対するケースはまれではあります。

3.遺言通りの承継による負担について

遺言通りに財産を引き継ぐ場合には、引き継ぐ方にとって悩ましい問題が生じるケースもございます。

例えば、相続税ですが、法定相続人以外の方が受遺者となる場合は、相続人が受遺者となる場合の1.2倍の相続税額となります。遺言者であるおじい様が、未成年であるかわいいお孫さんのために遺産をのこしたいと思っていても、その税負担を負うのは、おじい様の子供である、未成年者のご両親ということもございます。

そのほか、相続税の納税資金の確保が難しい方に、不動産だけを承継させる場合は、受遺者にとっては納税資金の確保に頭を悩ませることもあるでしょう。

税以外の観点からも遺言通りの承継が問題になるケースがございます。

遺留分を全く考慮していない遺言であると、結果的に、遺留分侵害額請求を遺留分権利者から受遺者に起こされる可能性があります。

親族間で訴訟問題を抱える心労を考えると、遺産分割協議にてうまく互譲することにより、遺産を分けた方が良いケースもあるでしょう。

4.まとめ

遺言と遺産分割協議について見て参りましたが、事前の遺言準備で気を付けておく点は、やはり税法上の問題があるでしょう。

遺言に従って遺産を分配し、その際に相続税も納付している場合には、その後に改めて相続人で協議をし、手続きをやり直すことになると、その再分配が税法上、「相続人間の贈与」とみなされ、贈与税が課せられる恐れがあるので、注意が必要です。

上記のケースで、相続財産に不動産がある場合には、登記費用が二回発生するという負担もよく検討する必要があるでしょう。

現在、遺言の作成や書き換えをご検討中の方におかれましては、ご自身が亡くなられた後に相続人間で改めて遺産分割協議を行うことが無いよう、相続人間の平等、公平を鑑みたうえで、遺留分にも配慮したよりよい遺言をのこすことも考えてみてはいかがでしょうか。

弊所では、遺言の起案・作成のお手伝い、遺言の書き換えについても数多くの実績がございます。まずは無料相談にてじっくりお話をお伺いいたしますので、お問い合わせをお待ちしております。

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