1. 相談の背景
相続人は自分一人だけと思っていたら…
母Xさんが15年前に死亡した後、母Xさん 名義の不動産について相続登記(名義変更)をしていなかった息子のAさん。
Aさんは相続登記が義務化されたことを知り、登記手続きをするため当事務所に相談にいらっしゃいました。
家族構成は、亡母Xさん(15年前に死亡)、亡父Yさん(5年前に死亡)、長男Aさん(未婚)、亡二男Bさん(10年前に死亡・子Cさんあり)です。
また、弟Bさんは、母Xさんが死亡した際に裁判所に対して相続放棄の手続きをしているとの事でした。
Aさんより、「相続人は自分一人だけなので、不動産の名義変更(相続登記)をお願いします」とご依頼をいただきました。
2. 相談に対する弊所の対応
相続関係をしっかり考えてみたら、他にも相続人が・・・
今回の事案を時系列でまとめると、
① 15年前に母Xが死亡 【母Xの相続人:父Y・長男A・二男B】
② 弟Bが亡母Xに対して相続放棄 【母Xの相続人:父Y・長男A】
③ 10年前に弟Bが死亡 【母Xの相続人:父Y・長男A】
④ 5年前に父Yが死亡 【最終的な母Xの相続人:???】
となります。
さて、上記の時系列の結果、最終的に母Xさん名義の不動産を相続する権利は誰が持つ事になるのでしょうか。
ここでポイントなのが、
1 父Yは、Aとともに、母Xの遺産を共有している状態であった
2 弟Bが生前に行った相続放棄は「母Xに対して」である
という事です。
母Xさんの遺産を相続する権利を持っていた父Yさんが死亡したことにより、最終的に父Yさんの相続人が母Xさんの遺産を相続する権利を持つ事になります。
また、弟Bさんは父Yさんに対して相続放棄をしていない為、父Yさんの相続人は本来であればAさんと弟Bさんです。
しかし、父Yさんの死亡前に弟Bさんが死亡しているため、弟さんの代わりにその子どもCさんがAさんとともに相続人となります。(代襲相続の詳細はこちら)
つまり、母Xさん名義の不動産の相続人として、Aさんだけでなく、弟Bさんの子どもCさんも該当することになるのです。
説明を聞いたAさんは驚きましたが、すぐに弟Bさんの子どもCさんに連絡を取り、一緒に相続手続きを進めていく事になりました。
また、当事務所は、戸籍一式を市区町村役場から、弟Bさんの母Xさんに対する相続放棄の証明書(相続放棄申述受理証明書)を家庭裁判所からそれぞれ取り寄せ、相続登記の準備を行ないました。
3. 結果
無事に相続登記が完了!
Aさん・弟Bさんの子どもCさん2名の名義で無事に相続登記ができました。
本件は、不動産の元々の名義人が亡くなってから長期間手続きをしなかったことにより、通常よりも手続きが複雑になってしまった事例でした。
相続登記をしないまま2次相続・3次相続が発生したり、そこに相続放棄まで関わってくると、名義変更までに困難が伴う事が間々あります。
本事例では最終的に無事に手続きを終えることができ、Aさんも胸を撫でおろしてらっしゃいました。
さて、この記事をお読みいただいた皆様はご実家の相続登記はお済みでしょうか。
まだの方、どのように手続きしたらいいか分からない方は、ぜひ一度ご連絡ください。