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熟慮期間内に相続人が死亡した場合の相続放棄対応 〜再転相続人による申述のサポート事例〜

熟慮期間内に相続人が死亡した場合の相続放棄対応 〜再転相続人による申述のサポート事例〜

1. 相談の背景

相続放棄申述サポートのご依頼

 

当事務所にご相談いただいたのは、被相続人A様の弟にあたる甲様でした。
A様が亡くなられた後、第一順位の法定相続人であるA様の子B様が家庭裁判所に相続放棄を申述し、すでに受理されていました。

これにより、相続権は第二順位の相続人であるA様の父C様に移りましたが、C様はAの相続が発生したことを知ってから熟慮期間内(3か月以内)に、相続放棄等の意思表示をすることなく死亡しました。

 

ここでのポイントは、「熟慮期間」内に相続人が亡くなった場合、その者の法定相続人が被相続人(この場合はA)についての相続放棄を、亡くなった相続人の立場で申述できるという点です。

これを「再転相続」といいます。

 

つまり本件では、甲様が父Cの相続人として、Cの立場でAの相続を放棄することが可能という状況でした。

 

なお、「熟慮期間」とは、相続人が「自己が相続人であることを知った時から3か月以内」に、相続を「承認するか、放棄するか」を決定するための法定期間です。

この期間内に判断しない場合、原則として相続を承認したとみなされます。

しかし、熟慮期間満了前に相続人が亡くなった場合、その判断は次の相続人へ引き継がれます。

 

甲様はこのような背景のもと、
・父Cの相続は承継したい
・しかし、Cの立場で被相続人Aの相続は放棄したい
とのご意向をお持ちでした。

 

さらに後日、甲様は「自分が第三順位相続人としてもAの相続放棄をしておきたい」とのご希望を追加でお伝えになりました。

 

2. 相談に対する弊所の対応

弊所の対応

本件は、相続放棄が第一順位から第二順位、さらに再転相続人へと引き継がれる事案であり、相続人の立場が複数重なる複雑な相続関係でした。
まず、当事務所では甲様に対し、以下の法的整理を行いながらご説明いたしました。

 

・被相続人Aの子Bはすでに相続放棄済み
・次順位の父Cは、熟慮期間内に放棄せずに死亡
・よって、父Cの相続人である甲様が、**Cの立場でAの相続を放棄(=再転相続人としての放棄)**できる
・父Cの相続(財産等)を承継しつつ、Cが受け継いだAの相続のみを放棄することは可能である
・加えて、甲様は第三順位相続人としてもAの相続権を持つため、その立場でも放棄の申述を行うことが必要である

 

甲様のご意向に沿って、当事務所では家庭裁判所への申述書作成と添付資料の収集等をサポートしました。

特に注意を要したのは、「どの相続人の立場で相続放棄を申述しているのか」を明確に記載することです。

再転相続人としての相続放棄申述は、通常の放棄と比べて書き方が難しく、家庭裁判所に誤解を与えると補正指示や不受理となるおそれがあります。

 

そのため、当事務所では申述書に「再転相続人としての放棄である」ことを明記し、必要に応じて補足説明書も添付しました。

 

また、第三順位相続人としての申述も併せて行うため、別途申述書を作成し、重複や混乱が生じないよう慎重に手続きを進めました。

3. 結果

結果

<顛末>
甲様が「再転相続人としての立場」で行ったAに対する相続放棄申述は、家庭裁判所にて問題なく受理されました。

あわせて、「第三順位相続人としての相続放棄」についても適切に処理されました。

 

<まとめ>
再転相続人としての相続放棄は、通常の放棄と異なり、「誰の相続を、どの立場で放棄するのか」を明確に記載しないと家庭裁判所で混乱を招くおそれがあります。

 

そのため、当事務所では申述書の記載方法を工夫し、法的背景を説明する資料も添付するなど、スムーズな受理に向けて万全の対応を行いました。

 

これにより、甲様は被相続人Aに関する相続(債務を含む)からは完全に離脱しつつ、父Cの相続については承継するという希望どおりの結果となりました。

 

相続放棄は、「誰の相続を、どの立場で放棄するのか」が非常に重要です。

特に今回のように、上位相続人が熟慮期間内に死亡した場合、再転相続人がその立場を引き継ぎ、相続放棄を判断する必要があります。

 

また、再転相続人としての申述書は、通常の放棄申述書より記載内容が複雑になりやすく、立場の説明不足による補正指示や不受理とされるリスクもあります。

そのため、法的構造の理解と正確な書面作成が不可欠です。

本件では、甲様の立場を正確に整理し、複数の相続関係に対して適切な申述を行うことで、法的リスクを回避し、ご意向に沿った解決を図ることができました。

当事務所では、このような複雑な相続放棄にも対応しております。

相続に関するお悩みや不明点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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