登記をする場合、原則として登記名義人の住所は都道府県名から記載しますが、
都道府県名(以下、県名)を省略できる場合があります。
①政令指定都市 ex,愛知県名古屋市、神奈川県横浜市
②県名と市名が同じ ex,青森県青森市、千葉県千葉市
③権利者(登記名義人)の住所と不動産の所在地が同じ県(不動産登記の場合)
ex,権利者 愛知県豊田市 不動産 愛知県犬山市 →豊田市からでok
ただ、省略できるかどうかと、省略するかしないかは別問題。
実際のところどうなのか、今までの保管してある登記情報をざっと見てみました。
幸い、当事務所は年間4000件を超える不動産売買の立会業務を行っていますので、資料はいくらでもあります。
結果、①②の場合は自分が見た限りでは全て省略してありました。
一方、③の場合には省略してあったりしてなかったりと様々でした。
全国展開している銀行や会社は、県名を省略せずに記載している場合が多かったように思います。
おそらく、登記ごとに省略できるかできないか考えるのは手間だし、記載に統一性をもたせたいというのもあるのでしょう。
また、地域によってばらつきがあるようで、例えば愛知県では県名を省略していることが多いようです。
さらに言えば、法務局によっては県名から記載して登記申請しても、登記記録には県名を省略して記載する取り扱いをしているところもあるようです。
さて、結局県名は省略するべきか否か。
登記自体は通るのでどっちでもいいといえばいいんですが、毎回どうするか悩むのもどうかと思うので、自分の中でルールを作った方がいいかなと思います。
①②の場合は省略でいいでしょう。
問題は③の場合ですが、
①②の場合は一応根拠がある(昭32.12.24民甲第2419号 商業登記の先例ですが・・・)のに対し、
③についてはどうも根拠が見つかりません。(どなたか知っていれば教えて頂けると助かります!)
また、県名省略することで、登記名義人の方から「県名入れ忘れてるんじゃない?」と突っ込まれることはあっても、県名から記載して登記することにクレームがつくとは思えません。
なので、③の場合は県名を省略せずに記載するのがいいのではないかと思います。
ただ、場合によっては県名を入れると逆に不自然になる可能性も・・・。
例えば前の登記名義人が新しい登記名義人と同じ市に住んでいて、登記記録に県名を省略して住所を記載している場合、新しい登記名義人について県名を省略せずに登記すると、統一感がなくなってしまいます。
また、登記記録上、不動産の所在の欄に県名は記載されません。
権利者の住所が不動産の所在地と同じ場所の場合(よくあります)、不動産の所在には「B市C町…」と記載されているのに、権利者の住所が「A県B市C町…」となってしまうのは違和感を感じるかもしれません。
これについては、住所が不動産の所在地と同じ「市」の場合は県名を省略すると決めてもいいかもしれませんね。
どちらも見栄えの問題なので、「弊所では住所については県名から入れることにしてます」といえばそれ以上追及されることはないと思いますが…。