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夏の思い出

こんにちは。小澤です。

猛暑が続いています。

肩に食い込むように照り付ける日差し。

焼けるようなアスファルトの熱気。

じりじりと胸を締め付けられるような暑さ。

いろんな表現が浮かんできます。

 

この季節になるといつも思い出す出来事があります。

今回はそのお話を・・・。

 

 

今から数年前、今年と同じような猛暑の続く時期でした。

リーガル・フェイスに入社して司法書士登録をしたばかりの私は、

ようやく立会決済にも慣れてきて、スムーズに進行できるようになってきた頃でした。

 

リーガル・フェイスの良いところの一つとして、「立会決済の経験を数多く積める」ことが挙げられます。

これは本当にありがたいことです。週末は一日に複数の決済を行う事は珍しくありません。

月末、決算末となると更に件数は増えていきます。もちろん最初は先輩方がきちんと同席して教えてくれますし、

最初から無茶な件数を任されることはありません。少しずつ進度に合わせて経験を積むことができます。

そうして少しずつ成長していき、初めて複数を一人で完結できた時は、これで自分も一人前だと嬉しかったことを覚えています。

また、同期合格者の集まり等でも、自分が他の先生よりもいち早く経験を積んでいる事に誇らしささえ感じていました。

 

いつしか、

「よし、今日は決済〇本か。頑張るぞ」

そう心の中でささやいて仕事に向かうようになっていました。

 

その日は朝から忙しく、スケジュールも非常にタイトな一日でしたが、スムーズに進行でき、

いくつか起こったトラブルにも柔軟に対処でき、暑さも忘れて清々しい気分でその日3件目の決済会場に向かいました。

決済会場の受付には、とても笑顔の印象的な女性が既にいらっしゃいました。ご自身もお疲れのところにもかかわらず、

汗をびっしょりかいて到着した私の事を労ってくださり、とても優しい言葉もかけてくださいました。

3本目の決済も無事に進行できそうだな」

知らず知らずのうちにそう思っていました。

 

書類確認、登記書類へのご署名ご捺印を終え、銀行様へのご実行依頼も終わり、

あとは銀行様のお手続きを待つのみとなりました。

そのお客様は、終始ウィットに富んだ会話でその場を盛り上げてくださり、とても良い雰囲気で時が進みました。

 

そうしているうちに銀行様のお手続きも無事終了しました。

そのお客様は家を売却するお客様だったので、売買代金が無事入金をしていることを確認して頂くと、

「わあ!見たことない数字!!」

と叫んでまた皆を盛り上げてくださいます。

私も一安心して、既に気持ちはこの後に行う登記申請の方に向いていました。

 

その時でした。

突然、その女性が泣き始めたのです。

本当にこらえきれない感じでした。

 

その瞬間、私はハッとさせられました。

 

この家はその女性が生まれ育った家だったのです。

いろんな思い出の詰まった生家。それを売却するということはその女性にとっては、

本当に今日は特別な一日だったのです。そんな中でも、悲しみを紛らわすように笑顔を振りまいてくださっていたのでした。

 

言葉が出ませんでした。

自分にとっては、「いつもの忙しい週末」「3本ある決済のうちの最後の1本」

だったのが、このお客様にとっては運命の一日だったのです。

いつのまにかこんな当たり前のことに気付けなくなっていた自分自身を非常に恥ずかしく感じました。

 

私たち司法書士は、いつもお客様の人生の一大ステージに立ち会っています。

あの日以来、決済を「〇本」と数えたことはありません。

それからは一組一組に100%誠実に、毎回緊張して、心を新たにして臨むようになりました。

このことに気づかせてくれたその時のお客様には今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

自分にとっては数ある中の一件かもしれないが、お客様にとっては一生に一度の一件なのです。

 

今でも暑い季節が来るとあの日の事を思い出します。

暑さ以上にじりじりと胸を締め付けられたあの夏の日・・。

今でも大事に心に宿して働いています。

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